その頃の自分は、職場で人と会えば、挨拶のあとによくダーツの話をしていた。
「最近、ダーツ楽しいんだよねー」
それが、会話の切り出しみたいになっていた。
その日も、帰りのエレベーターがたまたま一緒になった。挨拶をして、いつものようにダーツの話をした。
「最近、ダーツが楽しくて」
すると、
「面白そうですね」
と返ってきた。
ダーツの話をして、そんなふうに興味を持って返してくれた人は初めてだった。
少し意外だった。
「本当にやる?」
と聞いてみた。
これまでなら、ここで難色を示される。今回も、たぶんそうなると思っていた。
ところが、
「やる」
と返ってきた。
えっ、まじ?
内心では、そんな感じだった。本当にやるとは思っていなかった。
「やってみるなら、予定決める?」
そう聞くと、
「決めたい」
と言われた。
そこで、日程を決めるために食事に行くことになった。
今考えると、ダーツの日程を決めるだけじゃなく、あまり話したことのない人だったから、どんな人なのかを知る意味もあったのだと思う。
その頃は、職場では挨拶する程度。そんな相手と二人で食事をすること自体、何年もなかった。
食事をしながら話してみても、まだ「この人、いいな」というようなことを考えていたわけではない。
どちらかというと、
「この人って、どんな人なんだろう」
というくらいだった。
ただ、意外だなと思ったことはあった。
ダーツを「面白そう」と言うだけじゃなく、本当にやることにして、実際に予定まで決めている。
「意外と行動派なのかな」
そんなことを思った。
そして、ダーツをする人が増えるのは、普通に嬉しかった。
自分が楽しいと思っていることを、一緒にやってくれる人がいる。それだけでも十分だった。
でも、予定が決まって、少し時間が経つと、だんだん冷静になってきた。
よく考えてみる。
そんなに簡単に、あまり知らない人と二人で出かけたりするものなのかな。
そもそも、二人でダーツに行くって何なんだろう。
そこで、初めて少しだけ考えた。
「これって、デートなのかな?」


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